今年度は、作物体に供給された降雨や散水灌漑成分が、作物によってどのように集水され、土壌中に到達して消費されるのか定量的に評価することを目的として研究を行った。まず、葉に付着した水滴のうち、葉面に水滴状で貯留される成分を推定するため、葉面積指数、葉面のクチクラワックスおよび葉脈の構造など主に葉面の状態を表すパラメーターを用いて定式化した。また、前年度の実験結果より、葉面に流下した水滴が次第に拡大し、貯えられる現象が得られた。この結果を踏まえて、葉面における水滴の接触角や拡大速度などをパラメーターとした水滴貯留モデルを構築した。これらのパラメーターを得るため、圃場において栽培実験を行い、様々な作物体の生育ステージごとに、葉面の形状、状態および群落密度などを精査した。また、前年度の研究の結果より、葉面に水滴が当ることによって葉が振動し、水滴が流下する現象が明らかとなった。このような葉の振動をバネの挙動に近似し、水滴貯留モデルと組み合わせて葉面における水滴の挙動モデルを構築した。これを用いて、自己集水量、葉面貯留量および土壌面流下量を分離定量化するシミュレーションモデルを構築した。これらのモデルの妥当性を確認するため、デジタル高速度ビデオカメラを用いて水滴の挙動を可視化した。さらには、作物によって集水された成分が、現場においてどのように土壌に到達して作物体に消費されるのか解明するため、土壌中の水分動態モデルを構築し、水滴挙動モデルと組み合わせた。水分動態モデルのパラメーターを得るため、現場から土壌をサンプリングし、土壌の保水性および透水性を求めた。
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