研究概要 |
平成18〜19年度にかけて,降雨あるいは散水灌概によって作物に供給された水滴の挙動を解明するシミュレーションモデルを構築した.今年度は,モデルの精度向上を図るため,様々な形態の作物を栽培し,モデルのパラメーターである葉面の形状,葉面積指数,葉面のクチクラワックスおよび葉脈の構造などの各種インプットデータを収集した.また,前年度,作物体によって自己集水された水分が土壌面に到達した後,どのように消費されるのか解明するため,土壌中の水分動態モデルを構築し,これと水滴挙動のシミュレーションモデルを組み合わせた.実際には,土壌中の水分と熱の移動は同時に生じるため,土壌中の水分および熱輸送同時解析モデルを構築し,これと水滴挙動モデルを結合して水滴挙動-消費モデルの開発を行った.このモデルの妥当性を確認するため,水滴挙動を解明する栽培実験とともに,土壌中の水分状態,温度および土壌面のエネルギー収支も測定し,モデルの妥当性を確認した.また,実際の作物が栽培されている現場において,これらのモデルが適用できるかどうか検証するため,施設畑および露地畑において,作物による自己集水機能の測定し,作物による消費水量を評価した.実験の結果,モデルの妥当性を確認することができた.本研究によって,従来は損失成分と見なされていた作物体に遮断された水量のうち,作物体が自ら集水し,生育および生命維持に利用する成分を定量的に評価することが可能となった.これは,効率的な灌概計画に大きく資する成果である.
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