本研究では、循環型社会構築に欠かせない資源作物となりうる「微細藻類」を連続的に生産する新規高圧バイオマス・プロセス構築の基礎を築くとともに、高圧環境での微細藻類生育挙動の検討を通して生物工学に対して新たな学術的知見を与えることを目標としている。具体的に平成18年度は、高いCO_2固定能を有する緑藻Chlorococcum littorale(以下C.littorale)を用いて食品・物質・エネルギー源などに利用可能な脂肪酸の高効率生産能力に着目して、C.littoraleの資源作物としての可能性を検討した。プロセスの構築には、培養条件による細胞増殖および代謝物生産の制御が必須であるが、本研究では知見が僅少であったガス成分による制御に着目して検討を行った。C.littoraleの増殖に与えるガス成分の影響を検討した。O_2は増殖速度の低下を誘引したため、O_2-freeの通気培養よりCO_2の影響を考察した。既往の論文では、高CO_2濃度における増殖阻害が指摘されていたが、その原因については不明瞭であった。本研究では、増殖に与えるCO_2解離分子種の影響を詳しく考察した結果、増殖はHCO_3-(基質)とCO_2(阻害基質)の連動的寄与により進行することを明らかにした。一方、イオンクロマトグラフィーを用いた培地成分の定量分析から、増殖に与える培地中N源(硝酸イオン)の影響は極めて大きいこと、すなわちN源の欠乏とともに増殖が即座に停止し細胞が肥大化することを実証した。 さらに、C.littoraleの脂肪酸生産に与えるガス成分の影響を検討した結果、N源の欠乏状態において脂肪酸生産が促進されること、その際トリグリセリドが油滴状に蓄積されることを明らかにした。 また、CO_2ガスの高圧下での培養実験装置を組み立て、常圧と高圧でCO_2分圧を等しくした培養実験を行ったところ、培養速度については、分圧でほぼ規定されることが明らかとなった。
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