研究課題/領域番号 |
18658100
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦士 新潟大学, 自然科学系, 教授 (40018792)
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研究分担者 |
西海 理之 新潟大学, 自然科学系, 助教授 (60228153)
原 崇 新潟大学, 自然科学系, 助教授 (20323959)
小谷 スミ子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60018653)
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キーワード | 超高圧 / 食品アレルギー / エピトープ / 卵白アレルギー / 牛肉アレルギー / オボムコイド / γ-グロブリン / アレルゲン性評価 |
研究概要 |
わが国の食物アレルギー患者数は年々増加している。食物アレルギーの原因となる食品24品目が指定され、食物アレルギーに対する正確な診断と適切な治療及び予防が緊急の課題になっている。本研究は、熱に代わる食品加工法として注目をあびている超高圧処理によりアレルゲン蛋白質の構造を操作することにより免疫系を含む生体を制御し、アレルギー反応を抑制することを目指している。得られた成果を以下に示す。 牛肉アレルゲンタンパク質、γ-グロブリン(Bovine γ-globulin ; BGG)への影響 1)BGGに100-600MPaの超高圧を加えたところ、牛肉アレルギー患者から得られた血清中のIgEとの結合性は処理圧力の増加に伴い減少した。また、患者血清に感作したヒト好塩基様細胞に超高圧処理したBGGを作用させたところ、好塩基様細胞から遊離するβ-ヘキソミニダーゼの活性は処理圧力が高くなる程、低くなる傾向が認められた。このことは、超高圧処理によって、BGGのアレルゲン性を低下させる可能性を示している。 2)超高圧処理によるBGGの高次構造の変化をCDスペクトル、蛍光および紫外吸収スペクトル、疎水性基の反応性などにより測定した結果、BGGのエピトープ周辺の3次構造に、圧力による不可逆的な構造変化が起こり、これがアレルゲン性の低下をもたらすことが示唆された。 卵白アレルゲンタンパク質、オボムコイド(OVM)に及ぼす影響 1)超高圧処理したOVMの卵アレルギー患者血清IgG抗体およびIgE抗体との結合性はいずれも圧力が低い領域では圧力に依存して低下した。500,600MPaと圧力を上昇させるとIgG抗体との結合性は未処理OVMと変わらず、IgE抗体との結合性はむしろ増加した。加熱処理による変化は認められなかった。 2)CDスペクトルの測定からOVMは圧力および熱処理に対して2次構造的に強固であるが、蛍光スペクトルの測定から3次構造的には不可逆的な変化を生ずる事が明らかになった。前述のBGGの場合と同様に、高圧処理による高次構造の変化が、IgG抗体エピトープおよびIgE抗体エピトープの変化を誘導し、抗体結合性を低下させたものと考えられる。即時型アレルギーの要因であるIgE抗体との結合性の低下はアレルゲン性の低下につながる。 以上の結果から超高圧処理による畜産食品アレルゲン性低減化の可能性が明らかになった。この方法は他の食品アレルゲン性の低減化に役立つものと考えられる。
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