研究概要 |
コラーゲンは生体内に最も多く存在するタンパク質といわれている。そのアミノ酸配列中にグリシンが3個ごとに現れ、その結果、コラーゲン特有の3量体構造が形成される。コラーゲンは基本的には線維状で、力学的な強さを生み出す成分と考えられている。特異なコラーゲンとして網状の構造を作り出すIV型コラーゲンに着目し、筋組織の力学的な強度に関与する可能性を検討することとした。 すなわち、筋細胞は周囲を基底膜によって包まれ、筋に適度な歯ごたえを生み出し食肉の良否を決める要素である「適度の歯ごたえ」を生じる要素として重要との仮説を立てた。 本年度は、"食感"の新規解析方法の開発と、筋組織IV型コラーゲンの分布の解析を中心に進めた。 1.対象とする食肉の食感を計測 食肉の"歯ごたえ"や"歯切れ"などの、定量的に評価しにくい感覚的な現象である。食肉を切断する際の"抵抗"をコンピューターで数値化しパターン化することで"歯ごたえ"を評価するものである。これまでは"機械による"食肉せん断時の抵抗を計測してきたが、今回、人間の咀嚼筋の抵抗を筋電位計を用いて数値化した。この結果は、共同申請者泉本らにより開発され、「連続咀嚼筋電位の測定と解析」と題して岡山大学農学部学術報告Vol.96,59-63(2007)に発表した。 2.筋組織内IV型コラーゲン局在を免疫組織学的に解析 申請者らが開発したIV型コラーゲン特異抗体群を用い、蛍光抗体間接法で解析を行った。その結果、筋細胞周囲の基底膜は6種類あるα鎖のうちα1(IV)鎖とα2(IV)鎖のみであることを確認した。また筋組織の収縮を行う上で重要である神経筋接合部の基底膜IV型コラーゲンα(IV)鎖について解析した。ここにはα3(IV)鎖からα6(IV)鎖までがここに限局して分布した。この結果は「神経筋接合部に局在するIV型コラーゲンα鎖の解析」と題して第61回日本解剖学会中国・四国支部学術集会にて口頭発表した。また、筋紡錘についても解析し、基本的にはα1(IV)鎖とα2(IV)鎖であるが、筋紡錘内部の神経筋接合部にはやはりα3(IV)鎖からα6(IV)鎖が特異的に分布することが判明した。これらの結果は「骨格筋基底膜のIV型コラーゲンα鎖構成」と題して第112回日本解剖学会総会・全国学術集会(平成19年3月29日)において口頭発表を行う。 3.筋組織内IV型コラーゲンの量的解析、他の線維性コラーゲンの解析、コラーゲン量と食感との関連性は基礎実験を進めている段階である。
|