研究概要 |
グレリンは成長ホルモンの分泌を促進する内因性リガンドとして発見された。主な分泌器官は消化管であるが,私達は,ウズラの卵管膨大部でグレリンが産生されることを見出した。このことは,卵管内で卵が形成される間に,卵白中にグレリンが分泌される可能性を示しており,卵白にグレリンが含まれるならば,受精卵において,これが胚子の発達に関与する可能性がある。これを検討するために,卵白におけるグレリンの存在を示し,胚におけるグレリン受容体(GHSR)の発現を解析した。受精卵を孵卵し,孵卵0,2,4,6,8および10日目に卵白を採取して,時間分解蛍光免疫測定法でグレリン濃度を測定した。孵卵4,6,8および10日目胚を採取し,各胚のGHSRの発現を免疫組織化学およびRT-PCT法で解析した。孵卵前および孵卵10日目までの受精卵の卵白中にグレリンが検出された。このグレリン濃度は,孵卵2日目までは0.1ng/ml程度で,4日目には半減する傾向を示した。4日から10日目の胚においてGHSRの分布を免疫組織化学的に検索したところ,すべての胚で,表皮にGHSR陽性反応が認められ,この染色性は6日目に比較的強く,10日目では弱まる傾向があった。脳の上皮にもGHSR陽性反応が検出され,脊髄の一部でも陽性反応が認められた。RT-PCR法でGHSRのmRNA発現を検証したところ,4日目から10日目までのすべての胚で発現が認められた。以上の結果から,ニワトリ受精卵の卵白中にグレリンが存在し,胚は4日目にはGHSRを発現することが明らかとなった。このため,卵白のグレリンは,胚子を刺激してその発達の調節に関わる可能性が推定されるので,それを実証する必要がある。
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