研究概要 |
私達はニワトリの卵管でグレリンが産生されることを見出して,昨年度までに,卵白にグレリンが検出されることを明らかにした。本年度は本研究は,孵卵4日目までの受精卵に重点をおいて,胚の発育におけるグレリンの役割を検討した。このために,(1)孵卵前から4日目までの胚におけるグレリンおよびその受容体遺伝子と蛋白質の発現,(2)受精卵へのグレリン阻害剤の投与が胚子発達に及ぼす影響を解析した。 その結果次のことが明らかとなった。(1)受精卵の卵白だけでなく卵黄にもグレリンが存在するかと解析したところ,グレリンは卵黄にも存在し,その濃度は卵白より濃いことが明らかとなった。卵巣で産生されるものと考えられたので,卵胞壁のグレリンを免疫組織学的に検索したところ,顆粒層に存在することが明らかとなった。卵黄と卵白のグレリン濃度は孵卵5日まで変化しないことが示された。(2)初期胚に受容体が発現するかをRT-PCR法で解析したところ,孵卵前と1日後に強い発現が認められ,その後に減少した。免疫組織学的にはこの受容体は検出されなかったが,遺伝子発現を示したので,受容体は発現するものと推定された。(3)グレリンが胚の発達に関与する可能性を検討するために,グレリン受容体(GHS-Rla)のアンタゴニストであるD-Lys^3-GHSR6または抗グレリン受容体抗体を孵卵前の受精卵の卵黄または卵白中に投与して,胚発達を形態学的に評価した。処理卵の胚を5日目または15日目に剖検ならびに組織学的に解析したが,胚の異常な発達は認められなかった。胚細胞による阻害剤の取り込みまたは抗体による受容体の中和がなされたかを含めた今後の検討が必要である。
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