研究概要 |
本年度は近交系のマウス(C57BL/6J♂)を用い、脳、胸腺、心臓肺、肝臓、脾臓、腎臓、精巣の5つの発生ステージ(胚14日〔E14〕、胚17日〔E17〕、1日齢〔1D〕、1週齢〔1W〕、8週齢〔Adult〕)ごとに3つのDumt(Dnmt1、Dnmt3a、Dnmt3b)遺伝子の発現量の変化を調べDNAメチル化酵素関連遺伝子の発現時期、発現場所および発現動態を解析した。解析は、各発生ステージにおけるDnmt遺伝子の発現量を、リアルタイムPCRを行い調べた。 RT-PCRで全てのサンプルについて各臓器における発現パターンを調べ、それを基に特徴的な脳、肝臓、精巣の3つの臓器についてリアルタイムPCRを行った。(1)Adultの脳でDnmt1とDnmt3aの発現量は、他の遺伝子と比較して顕著に高かった。このことはマウス成体でDnmt1とDnmt3aが、神経システムの調節と成体中枢神経系でシナプス可塑性を調節する役割を担っている(Jonathan et al.,2005)ことに起因する結果となった。(2)Dnmt1の発現は、脳と肝臓では1Dが最も高く、1W〜Adultで減少する傾向にあった。(3)Dnmt3aの発現は、3つの臓器でDnmt1と同様なパターンを示した。(4)Dnmt3bの発現は、脳と肝臓においてDnmt1およびDnmt3aと同様なパターンを示した。しかし、精巣では発生ステージ間に大きな変化は見られなかった。このことから、Dnmt遺伝子は脳と肝臓における発現と精巣における発現の動態が異なるものと考えられ、Dnmt遺伝子の使われ方が臓器間で異なっているものと考えられた。 このような解析の結果をもとに最終年度となる来年度は、各臓器の発現部位の特定をin situ hybridization法を用い、さらにDnmt遺伝子のセンスおよびアンチセンスcRNAをプローブにしてさらに詳細に検討を進める計画である。
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