本研究は、近年日本国内の生態系を破壊する大きな要因のひとつであるイネ科外来種を駆除するために、遺伝子組み換え体と野生個体とを交配させることにより、発芽能力のある次世代を作出できなくするという手法が可能であるか否かを検討するものである。モデル植物として、多くの遺伝情報が集積されており、遺伝子組み換え技術の確立されているイネを利用する。本年度は、まず、どのような遺伝子に変異をもった個体を利用すればよいのか、その探索を行った。対象とする遺伝子の条件としては、両性あるいは父性遺伝すること、また優性であることである。その過程で、申請時に予定していた化学変異原により作出した変異体の利用については、目的の変異を持つと考えられるものは次世代が得られないことから利用できないことがわかった。そこでミュータントパネル(農業生物資源研究所)を用いて、おおむね3/4以上の種子が発芽しない表現型を全133ライン抽出した。現在これらのラインのうち、目的に合致する変異を持つラインを効率的に抽出する方法を検討中である。また既存文献やデータベースから利用可能な遺伝子を探索しているが、本研究の目的に合致する可能性の高い、胚乳にショ糖を蓄積するアンチセンスSPK遺伝子を導入した形質転換体がすでに作出されていることから、次年度以降、この変異体を入手し活用したい。
|