本研究では、イネ科外来種草本(シナダレスズメガヤ)の駆除を念頭におき、イネをモデル植物として不稔個体を導入して駆除する方法を模索している。研究代表者は、花粉親として機能した時に「発芽できない種子」をつくる次世代を残さないイネを、突然変異体や遺伝子組換えによって作出することを目的としている。今年度は、昨年度独立行政法人農業生物資源研究所より購入した、発芽率が0.4未満のイネ(日本晴)の突然変異系統83系統のうち、昨年度とは異なる25系統(データベースでの平均発芽率0.32)を播種した。目的とする変異を持つ種子は発芽ができないはずであり、実際の発芽率も0.25程度になるはずであったが、昨年度と同様、発芽率は高く0.80であった。そこで、目的の変異は劣勢であり入手した個体はミュータントヘテロであると考え、その変異を探索するため、さらに得られた種子を発芽実験に供試し、2代目のミュータントヘテロの個体を選抜しようと試みた。その結果、発芽率が0.75未満のものは見られず、ほとんどが0.9以上発芽し、目的とする個体は見られなかった。結果として、ミュータントパネルを用いたこの方法で目的とする変異を持つ個体をスクリーニングする方法は断念せざるを得なかった。遺伝子組換え体の作出に関しては、昨年度絞り込んだ胚乳異常に関係する遺伝子のうち、胚乳発生におけるゲノムインプリンティングに関係する遺伝子MET1bの遺伝子のアンチセンスを作成中である。また、このMET1bについての変異体はホモ個体の生育が困難であるとの報告があるため、種子を購入しホモ変異体の培養方法の確立を試みている。実際に変異体を作出するには至らなかったが、ターゲットとすべき遺伝子と開発の方向性を見出すことができた。
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