深海底熱水噴串孔周辺の物質循環に大きな役割を果たすイプシロンプロテオバクテリアについて、その炭素固定やエネルギー代謝の系を明らかにするため、18年度より、遺伝子操作系に向けて、様々な観点から検討を重ねている。19年度は18年度に引き続き以下の項目について検討を行った。個々の研究内容及びその結果は以下の通りである。 1)昨年度、新たな菌株取得を浅海底熱水活動域から試み、その菌株について系統解析を行ったが、イプシロンプロテオバクテリアはわずか数株であった。 2)分離菌株からのプラスミド探索がうまくいかないため、イプシロンプロテオバクテリアの濃集する天然試料からのプラスミド抽出及び、ゲノム増幅によるメタゲノム解析手法を適用し、プラスミド断片の回収を試みた。技術的な問題から十分なライブラリー構築には至っていないが、確実にプラスミドに由来する遺伝子断片の回収には成功し、今後の解析手法の改良により、プラスミド部分配列の回収は十分可能である感触を得た。 3)遺伝子破壊系構築のために遺伝子相同組換え用のプラスミドを2種作成した。これらのプラスミドはイプシロンプロテオバクテリアNBC37-1株の硫黄酸化経路遺伝子であるsocY1X1とsoxY2Z2をそれぞれ破壊するようにデザインされた。プラスミドをイプシロンプロテオバクテリアの染色体DNA上に導入するため塩化カルシウム法、熱ショツク法、エレクトロポレーション法などを試みたが現在までのところ目的の遺伝子破壊株は得られていない。
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