深海底熱水噴出孔周辺の物質循環に大きな役割を果たすイプシロンプロテオバクテリアについて、未知要素の多い炭素及びエネルギー代謝系を明らかにするため、18年度より、遺伝子操作系に向けて、様々な観点から検討を重ねている。20年度は19年度に引き続き以下の項目について検討を行った。個々の研究内容及びその結果は以下の通りである。 1)新たな菌株取得を深海底熱水活動域から試み、イプシロンプロテオバクテリア20数菌株の単離に成功したが、プラスミド保持を確認することは出来なかった。なお、この課程で2つのプラスミドを保持する新規硫黄酸化ガンマプロテオバクテリア1株を見出した。硫黄酸化ガンマプロテオバクテリアはイプシロンプロテオバクテリアと並ぶ深海底熱水活動域の重要構成種であり、この菌株は深海底に生息する硫黄酸化ガンマプロテオバクテリアの生理生態解明に貢献することが期待される。 2)イプシロンプロテオバクテリアの濃集する天然試料からプラスミドを抽出し、in vitro transposomicsを用いて大腸菌への回収、クローニングを試みた。前年度のゲノム増幅を介したプラスミドメタゲノム解析の試みより、イプシロンプロテオバクテリアの濃集する試料中のプラスミドの存在は確認されているが、今回の試みからは、これまでのところ、大腸菌への回収には成功していない。 3)ゲノム解析を行ったイプシロンプロテオバクテリア2株について、プレート培地上でのコロニー形成、プラスミドによる形質転換、相同換えによる遺伝子破壊を試みた。今後の実験に耐えうるような良好な結果は残念ながら得られなかった。
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