抗動脈硬化因子のアポリポタンパク質A-I(apoA-I)は、長寿関連遺伝子であり、その転写調節機構の解明は、健康長寿に関連する食品成分の発見や抗動脈硬化作用を発揮する医薬品開発に重要である。しかし、その転写調節機構の詳細は、未だ不明な点が多い。 抗動脈硬化因子のapoA-Iレベルは、エストロゲンなどのホルモンにより変動することが知られ、植物エストロゲンでも同様な活性が期待される。これまで当研究室では、ヒト肝ガン由来株化細胞であるHepG2細胞における、ゲニステインやレスベラトロールによるヒトapoA-I遺伝子の転写活性化機構について報告してきた。本研究では、レスベラトロールなどの植物エストロゲンのアポリポタンパク質遺伝子発現に対する影響を転写レベルを含めて解析した。 検討の結果、エクオール、バチカノールBがapoA-I分泌を有意に上昇させることを明らかにした。レスベラトロール添加により誘導されたapoA-I遺伝子転写活性化は、レスベラトロール添加後、24時間で誘導され、その誘導はapoA-I遺伝子プロモーターの-202〜-198領域、-210〜-206領域が重要であることを、CAT分析やゲルシフト分析で確認した。さらに、クロマチン免疫沈降法により、レスベラトロール添加により誘導されるapoA-I遺伝子転写活性化時には、apoA-I遺伝子プロモーターのエストロゲン応答領域へのエストロゲン受容体αの結合が、対照と比べて、1.82倍多いことを明らかにした。
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