研究課題
穀類の胚乳形成に関する研究は、胚乳組織における貯蔵物質合成に関わる遺伝子の器官レベルの解析が行われてきた。しかし、胚乳形成を制御する分子機構は未だに明らかにされていない。これまでに、胚乳形成期の種子におけるトランスクリプトーム解析を行い、胚乳分化期に強く発現する遺伝子を多数得た。本研究では、それら候補遺伝子が胚乳分化とどのように関係するのかを明らかにするため、未分化状態の生きた胚乳組織へ「胚乳インジェクション法」を用いて合成RNAを直接導入し、「mRNA過剰」や「RNA干渉」を誘導することで、候補遺伝子の機能解析を行うことを目的として研究を進めた。しかし、合成RNA分子をインジェクションすると胚乳組織が形態異常を示し、3年間で目的を達成するのは困難であると判断した。そこで本年度は、RNAiを誘導する分子を導入した形質転換イネを用いて機能解析を行った。【胚乳組織におけるRNA干渉の誘導】胚乳組織で合成・蓄積する「プロラミシ」を候補遺伝子として、RNA干渉を誘導する分子を設計し、矮性イネ、及び日本晴を用いて遺伝子導入した。その結果、多重遺伝子として存在するプロラミン遺伝子群を抑制し、内在性プロラミン分子種の量を減少させることに成功した。更に、RNAi誘導ベクター上で、外来遺伝子を強発現すると外来性タンパク質を多量に蓄積することが明らかとなった。【分化期特異的遺伝子の発現解析】胚乳分化期である開花後5日目の胚乳組織を用い、アリューロン層となる部位、デンプン性胚乳となる部位の網羅的遺伝子発現解析をイネ44kオリゴマイクロアレイを用いて行った。その結果、それぞれの組織で特異的に発現する貯蔵物質関連遺伝子が、既に胚乳分化期から発現していることが明らかになった。それら遺伝子中には転写制御因子遺伝子が存在したので、RT-PCR法を用いて詳細な発現解析を実施した。
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Journal of Experimental Botany 60
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 72
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http://www2.kpu.ac.jp/life_environ/genetic_eng/sub12.html