研究概要 |
キラルフォスファゼン塩基についてはC2対称を持つ構造が、不斉反応を行う上で有利と考えられるので、フォスファゼンユニットを二つ配置したC2対称構造をデザインして合成した。中でも1,2-ジフェニルエタンジオールから誘導したキラルフォスファゼン塩基を有機金属試薬へ配位するリガンドとして用いて不斉反応に利用した。有機亜鉛化合物はさまざまなキラルリガンドの存在下においてカルボニル基に対してエナンチオ選択的に1,2-付加することは従来にある程度研究されている.このキラルフォスファゼン塩基の機能を明らかにするための第一段階としてこの1,2-付加反応を検討し、ベンズアルデヒドへの1,2-付加において70%ee程度の不斉誘導を確認した。また有機亜鉛化合物のエノンへの1,4-付加反応についてもこのキラルフォスファゼン塩基の効果を検討し、同様の結果を得ており今後さらに最適化に向けて検討する予定である。一方、有機ケイ素化合物の活性化に対してもこのキラルフォスファゼン塩基を触媒として検討したが、活性が弱く現時点では変換反応に成功していない。トリフルオロメチルケイ素化合物については反応が進行することが判明したので、さらに不斉誘導を検討する。またマロン酸誘導体のエノンへの1,4-付加反応をこのキラル塩基を触媒として検討したところ90%eeに近い不斉誘導を達成することができた。この反応においては当量のリチウム塩の存在が高い不斉誘導を得るのに効果的でありその機構の解明が重要と考えられる。そこでこの触媒とリチウム塩との錯体のNMRを解析したところ1対1の錯体を形成するところで変化が現れており、実際の反応においても1対1の当量比のときに最も高い不斉誘導と収率が得られている。この反応の適用範囲と反応機構について更なる詳細な検討が必要と考えられる。
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