研究課題
本研究の目的 遺伝情報分子(DNAおよびRNA)に配列特異的に結合する分子は、ゲノム機能解析に重要なツールとなるばかりでなく、治療薬としての発展性を秘めているため、最近とくに注目されている。高次構造のDNAあるいはRNAに対して特異的に結合する分子は、論理的な分子設計が困難なため、本研究では、動的コンビナトリアル化学の手法を適応した新しい検索法を検討することにした。この手法では平衡に達している系に標的分子を入れ錯体形成によって平衡を移動させ、自動的に選択的結合分子を得ようとするものである。一般のコンビナトリアル化学に比べて、候補化合物をあらかじめ合成する必要がない利点があるものの、反応系が極めて複雑になる欠点がある。本研究課題ではDNA高次構造を認識する低分子の開発を目的に、チオールージスルフィド平衡反応を活用した効率的検索を検討する。またそのほか水溶性触媒によるメタセシス反応を利用した動的コンビナトリアル化学についても検討する。平成19年度の研究成果 合成:前年度までに、DNA結合ユニットとしてA3T3領域に選択的な結合能を有するHoechst33258骨格のマイナーグルーブ接触面と反対側にカルボキシル基を導入した分子の合成法を確立した。平成19年度はこれに枝分かれスペーサー構造を結合させ、スペーサーの末端に銅イオンとの錯体形成ユニットとしてビピリジンを結合させた。ダイナミックコンビナトリアル化学:前年度までに行っていたジスルフィド交換反応によるダイナミックコンビナトリアル化学に代わり、金属イオン結合を解した集積反応を検討した。その結果、ヘキスト骨格にスペーサーを介して導入したビピリジン部分は分子内で銅イオンと錯体形成することなく、分子間の集積に作用できることを確認し、動的認識の可能性を確立した。本年度は、更なるDNAを鋳型とする協奏的認識分子の開発に展開できる重要な成果を得た。
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