分泌細胞としてラット好塩基球株(RBL2H3細胞)を用いた。RBL2H3細胞は、細胞表面にIgE受容体をもち、この受容体にIgEを結合させることによって、IgEが認識する抗原で開口放出によるヒスタミン分泌を誘導することができる。この抗原依存的(ターゲット依存的)分泌を利用して、新しい型のDDSを開発する。まず、ターゲット細胞としてCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞を用いた。CHO細胞にはIgEの認識抗原であるDNP(dinitrophenyl)基を修飾させておき、かつRBL2H3細胞から分泌されたヒスタミンに応答するようにヒスタミン受容体(H1受容体)を発現させておく。このことを、次のように行った。 (1) ヒスタミン受容体(H1受容体)のクローニングとCHO細胞への導入 HeLa細胞よりRT-PCRによってH1受容体のcDNAを単離した。単離したH1受容体のcDNAを、GFPを同時に発現するベクター(pIRES-EGFP)に組み込んだ。これをCHO細胞に導入し、G418による薬剤選択後、GFPの蛍光を指標にして、H1受容体を安定に発現するCHO細胞株(モノクローン)を数クローン得た。 (2) CHO細胞のDNP基修飾 CHO細胞を弱アルカリ性存在下に、DNBS(dinitro-benzene-sulfonic acid)と混ぜ、37℃でインキュベーションすることによって、細胞表面のアミノ基にラベルする。細胞が生存できる条件で、かつ十分なラベルが施せる条件を見出すために、反応条件(pH、DNBSの濃度、反応時間)をいろいろ変えて、最適条件を調べたが、十分ラベルする条件では、細胞のviabilityが著しく低かった。現在、さらなる条件検討を行うとともに、あらかじめリン脂質にDNP基を修飾し、それを細胞膜に取り込ませる方法を試みている。
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