研究課題
クラスリンはエンドサイトーシスをはじめとする細胞内でのタンパク質輸送系を制御する主要な因子として知られ、クラスリン被覆小胞を構成する成分としてもっとも早く発見された分子の一つである。クラスリンが結合するドメインはクラスリンボックスと呼ばれ、特徴的な配列を持つことが示されている。クラスリンボックスはエンドサイトーシスに関与するタンパク質以外にも存在しており、例えばG蛋白質共役型受容体の脱感作に関与するリン酸化酵素G protein-coupled receptor kinase 2(GRK2)にもクラスリンボックスが存在する。そこで、GRK2の活性化機構に果たすクラスリンの役割について解析した。すでにGRK2のクラスリンボックスにクラスリンが結合することは報告している。そこで、クラスリンがGRK2の活性化にどのように関与しているのか以下の実験により明らかにする。(1)クラスリンボックスに変異を導入した変異型GRK2を作製した。(2)β_2アドレナリン受容体(β_2受容体)のアゴニスト依存性のリン酸化は変異型GRK2により阻害された。すなわち、変異型GRK2がドミナントネガティブ体として働くことが明らかになった。(3)RNAiを用いてクラスリンをノックダウンさせると、β_2受容体のリン酸化は阻害された。(4)β_2受容体とGRK2との相互作用をBioluminescence Resonance Energy Transfer(BRET)を用い解析すると、変異型GRK2は野生型GRK2と同程度にβ_2受容体と相互作用できることが明らかになった。(5)変異型および野生型のGRK2のリン酸化活性をロドプシンを基質として測定すると、変異型GRK2は野生型と同じようにリン酸化活性を保持していた。これらの結果を考え合わせ、細胞内ではクラスリンがGRK2の活性化に必須の役割を果たしていること(しかしin vitroでは必要としない)が明らかになった。すなわち、クラスリンがスカホールド蛋白質として働いている可能性が明らかになった。
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