研究概要 |
これまでに慢性疲労患者ではウイルス感染防御に関わるRNaseL由来、もしくはその関連タンパク質が変動していることが病態に関与すると示唆されている。しかし、実際にそれらをタンパク質レベルで検出した研究グループはない。そこで、我々は、独自に開発したRNase L抗体を用い、慢性疲労患者において変動するタンパク質の解析を行った。その結果、我々の抗体により37kDa、および33kDaの位置にRNase L抗体と反応するタンパク質を検出した。健常人と比較すると、慢性疲労患者では37kDaタンパク質が完全に消失し、33kDaタンパク質が増加していた。これらの現象は、慢性疲労患者41例中17例(41.5%)で見られ、過去に慢性疲労の診断に利用できる可能性があると言われた他の候補因子に比べて非常に高率であった。しかし、慢性疲労患者全てに共通して37kDaタンパク質の消失、及び33kDaタンパク質の増加が見られないことから、我々のRNase L抗体は慢性疲労患者の一部を認識していることが考えられる。そこで、我々は健常人の末梢血を用いて37kDa、及び33kDaタンパク質をイオン交換クロマトグラフィーにて精製後、二次元電気泳動で分離し、MALDI-TOF/TOF/MS、nano LC-MS/MSで同定を行った。その結果、33kDaタンパク質はProtein A、37kDaタンパク質はProtein Bであった(これらタンパク質については現在再現性を検討中)。Protein A,Bは、代謝系の酵素である一方、RNase Lと共通アミノ酸配列を有し、且つ、生体内でのウイルス防御というRNase Lと類似する生理活性を発揮する関連タンパク質であることがデータベース検索から分かった。これは我々の抗体がRNase L以外の関連タンパク質を認識していることを示唆する。 Protein A、及びProtein Bは、特定の慢性疲労症候群患者の病態に関与している可能性が考えられるので、今後これらタンパク質を検出することにより、発症メカニズムの明らかな慢性疲労症候群を診断する(新たな疲労クライテリアの構築)とともに、適切な治療法を提供するための有効な診断マーカーとして開発していく予定である。
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