アルツハイマー病や白内障などのコンフォメーション病においては、亜鉛や銅といった必須金属の局所的な濃度上昇が病因となるタンパク質凝集を惹起することが知られている。形成された凝集体は活性酸素を活発に生成することにより重篤な細胞傷害を起こすとともに、さらなるタンパク質凝集を誘発する。 本研究では、こういったコンフォメーション病の新規治療・予防薬の開発を最終的な目的として、高等植物において重金属の解毒や細胞内濃度調節、さらには活性酸素の消去を担うことが知られている低分子ペプチド、フィトケラチン(PC)のタンパク質凝集に対する溶解および形成抑制作用について解析を行った。 本年度は、試験管内での機能解析を中心に行った結果、 1)アルツハイマー病の病因となるアミロイドβの凝集や、内障発症にも関連するαクリスタリンの凝集は、亜鉛や銅が存在することによって強く惹起されること 2)PCは、アミロイドβ凝集に対しては凝集溶解作用、αクリスタリン凝集に対しては形成抑制作用を持つこと 3)PCは、アミロイドβやαクリスタリンに結合することによって三次元的な構造変化を起こすことを明らかにした。 来年度は、PCとアミロイドβやαクリスタリンの相互作用についてさらに詳しく解析することにより、その溶解・形成抑制作用のメカニズムの分子レベルでの解明を目指す。さらに、PCのその他のコンフォメーション病の病因タンパク質に対する作用についても動揺に詳細な解析を行う予定である。
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