本課題では、薬物送達に有用な皮膚に注目し、ここにおいて、薬物の細胞内外の輸送を担う膜タンパク質・トランスポーター群の機能を解析し、経皮投与の可能性の拡大、皮膚光毒性発現機構の解明と回避戦略、また、皮膚の薬物トランスポーターを利用した新規薬物送達システム開発に基盤的知見を提供すること目的としている。 経皮投与される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)には、そのバイオアベイラビリティーが物理化学的パラメーターによって説明困難なものが存在することから、本年度は、まず、NSAIDsであるフルルビプロフェンに焦点を絞り、解析を実施した。単離皮膚組織を用いて、Ussing・typeChamber解析において、[^3H]フルルビプロフェンの皮膚透過には担体介在型の輸送機構が見出され、特に、皮膚組織の取り込み機構には、飽和性・温度依存性・エネルギー依存性といったトランスポーターの関与を示唆する結果が得られた。さらに、詳細な阻害プロファイル実験を実施した結果、皮膚の[^3H]フルルビプロフェン取り込み機構に有機アニオントランスポーター(OATs)が関与することが示唆された。そこで、Oat2が一部のNSAIDsを輸送することが知られていたことから、アフリカツメガエル卵母細胞にOat2を発現させ、取り込み輸送実験を行った。その結果、Oat2を発現した卵母細胞は有意に[3H]フルルビプロフェンを取り込んだことから、皮膚におけるフルルビプロフェン透過機構に有機アニオントランスポーター・Oat2が関与していることが示唆された(投稿中)。 本年度の研究により、薬物トランスポーターが皮膚の薬物透過に寄与することが示された。皮膚には、MDRsやMRPsなど主要な薬物排出型トランスポーターも発現していることから、次年度はこのようなトランスポーター分子と薬物皮膚透過との関わりを解明することが課題と考えられる。
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