好熱菌由来のチトクロームP450(P450)の三次構造安定性を利用して、有機溶媒中で有機物質を代謝できる酵素系の構築を目的とし、この反応系を医薬品合成や環境中のダイオキシンやPCBなどの異物分解に応用することを目標とする。まず、好熱菌Thermus thermophzlus由来のP450であるCYP175AlcDNAを単離し大腸菌で発現させ、これがβ-カロテンを代謝することを明らかにした。さらに、平成19年度においては、未知であったP450電子伝達系の精製・単離を試みた。Thermtus thermophilusの細胞質画分をイオン交換クロマトグラフィーにより大きく6つの画分(A〜F)に分画し、それぞれの画分とCYP175A1、NADPHを混合し、β-カロテンへの水酸化活性を測定したところ、画分Cと画分EとCYP175A1、NADPHを混合した時にのみ水酸化活性が検出された。このため、画分Cと画分Eをそれぞれアフィニティークロマトグラフィー(ADP-Sepharose)や疎水性クロマトグラフィー(butyl-Sepharose)などを用いてさらに分画し、どの画分に電子伝達系が存在しているかを確認するため、前記と同様にそれぞれの画分とCYP175A1、NADPHを混合しβ-カロテンへの水酸化活性を測定した。これらの因子が単一バンドにまで精製されたところで、MALDI-TOF/MSを用いて、そのバンドに含まれるタンパク質を同定したところ、画分Cに含まれるタンパク質はthioredoxin reductase、画分Eに含まれる電子伝達タンパク質はferredoxinであることが明らかとなった。この結果から、CYP175A1の電子伝達系はNADPHを電子供与体として、thioredoxin reductase及びferredoxinから構成されていることが明らかとなった。さらに、これらを大腸菌に発現させ精製して、熱安定性を確認した。
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