一般に遺伝子の機能を具現するのは、複雑な翻訳後修飾を経た最終産物である蛋白質であるため、蛋白質そのものを解析し、疾患の診断や治療に応用する抗体作製技術の確立が待望されている。以上の観点から、本研究では、「数百から数千種類以上もの疾患関連蛋白質の中から医薬品シーズあるいは創薬ターゲットとなる蛋白質を絞り込むための医療薬学的かつ臨床薬学的基盤技術の開発」を目的として、疾患関連蛋白質を認識する抗体を迅速かつ網羅的に作製可能とする技術の開発を行った。 そこでまず、あらゆる抗原に対する抗体を含んだナイーブB細胞レセプター遺伝子ライブラリをファージファージ表面に提示させることを目的に、抗原結合領域であるVLとVHドメインをリンカー配列でつなぎ合わせた一本鎖抗体(scFV)をファージに提示させ、Variable region geneからクローニングする技術の開発を行った。その結果、ナイーブB細胞レセプター遺伝子をPCRにて増幅・回収し、ライブラリサイズが2.4×10^9のライブラリサイズを持つ抗体ライブラリの作製に成功した。次に、極微量の疾患関連蛋白質に対するアフィニティパンニング技術の確立を行った。対象疾患としては、乳がんと乳腺に由来する細胞株の発現差異解析を行い、2D-DIGEを用いたタンパク質の分離および発現解析を行い、発現変動の見られる複数のタンパク質スポットを同定することが出来た。さらに、タンパク質を回収し、ウェスタンブロットなどに汎用されるニトロセルロース膜に転写し、パンニング条件の最適化を行った。その結果、僅か100pgという微量の抗原に対しても反応性を持つ一本鎖抗体を得る条件を確立することが出来た。通常、このアフィニティパンニングの操作には、イムノチューブが用いられるが、イムノチューブへの固相化には、最低でも数マイクログラムの抗原を必要とするため、微量の蛋白質を抗原でもパンニングが可能であったメンブランパンニングの有用性が示唆された。
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