研究概要 |
キチナーゼは食物の消化ばかりでなく、キチン質をもつ寄生虫や真菌から生体を防御したり、レクチンとして免疫系を制御することが示唆されている。一方、キチンおよびキチナーゼがアレルギー反応を直接制御する可能性を示す知見が集まりつつある。研究の目的は、キチンとキチナーゼによるアレルギー反応制御のメカニズムを明らかにすることである。そこで、初年度は、キチナーゼが粘膜免疫とアレルギー反応を調節していることの直接的な証拠を得るために、消化管キチナーゼ欠損マウスの作成を試みた。 エクソン1をネオマイシン耐性遺伝子と置き換えたターゲティングベクターを作製した。これをマウス胚性幹細胞(ES細胞)に導入し、得られた相同組み換え体からキメラマウスを作成した。キメラマウスからヘテロ欠損マウスを作り、ヘテロマウス同士の交配によりノックアウトマウスを作成するに至った。遺伝子が欠損したことはゲノムDNAのサザンプロット、RT-PCR法により確認した。現在のところ、遺伝子欠損マウスは、正常に生まれており、通常の飼育下では顕著な形質異常は観察されていない。また、LacZ遺伝子を導入しており、LacZの検出から、本酵素は本来発現すべき、耳下腺と胃粘膜に発現していることを確認した。現在、戻し交配でF3の産子を得ており、F5,F6世代を使って、さまざまな実験を開始する予定である。 また、上記研究と平行して、キチナーゼの肺や気道また、消化管における発現細胞の同定、細胞内局在を組織化学的に解析し、アレルギーモデルの作成準備を進めた。
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