キチナーゼ(acidic mammalian chitinase)は哺乳類の唾液腺と胃粘膜で産生され、消化液の中にも十分含まれる。また、気道の上皮にも弱く発現する。キチナーゼは食物(節足動物や甲殻類など)の消化ばかりでなく、キチン質をもつ寄生虫や真菌から生体を防御したり、レクチンとして免疫系を調節することが示唆されている。一方、キチンおよびキチナーゼがアレルギー反応を制御する可能性を示す所見が集まりつつある。本研究の目的は、キチンとキチナーゼによるアレルギー反応制御のメカニズムを明らかにすることである。初年度に作成した消化管キチナーゼ欠損マウスを形態学的および生化学的に解析した。 遺伝子欠損マウスは、正常に生まれるものの、雄の出生頻度が野生型より低く、生殖器官(精巣など)に異常があることが予想された。通常飼育下では、顕著な形質異常は観察されていない。LacZの検出から、キチナーゼが本来発現すべき、耳下腺の終末部と胃体部の主細胞に発現することを確認した。また、ノックアウトマウスでは、耳下腺終末部と主細胞には本遺伝子および遺伝子産物が発現しておらず、遺伝子が完全にノックアウトされていた。 主細胞はペプシノゲンを産生するが、キチナーゼの欠損はペプシノゲンの発現には影響せず、同一細胞内に共存する消化酵素の産生系には影響を与えないことがわかった。キチナーゼ欠損マウスは、アスペルギルス肺炎による炎症が悪化すること、一方オブアルブミン誘導肺炎の程度は低い傾向があることが示された。
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