本PEG法の切片が通常超薄切片の数倍厚であることと電子散乱媒体である包埋樹脂が無いことから、観察対象の極めて明瞭な輪郭の立体構造の把握が可能なことを証明できた。特に腎糸球体スリットの構造の優れたトモグラフィー像を得て、従来の原尿濾過膜の理解と異なる新たな構造を提示出来た。主たる所見は欧文誌JEMに発表した。 免疫電頭の解析対象が細胞骨格の場合以外、特に可溶性蛋白の場合は、アルデヒド固定だけを施した試料をPEG法に則り包埋する際に、60度での浸透包埋する時間をトータルで40分に留めると、良好な組織細胞像と同時に充分な各種抗原性を保持した標本が得れれることを突き止めた。 核マトリックス構成蛋白を免疫原として網羅的にモノクローン抗体を作製することが、他の目的の下で京都大の竹安邦夫教授が既に開始していることを知ったので、この点に関しては共同研究で墜行することに決めて、計20個の抗体の供与を受けた。局在解析対象の細胞核として、発生過程および成熟期のラットの肝臓、腎臓、精巣、小腸、皮膚、脳と網膜を選択した。得た抗体のうちで7種類が、光顕レベルで脳、網膜、腎臓内において多様な発現局在を示した。そのうちの3種について、PEG法による免疫電顕金コロイド法を試みたところ、網膜の神経節細胞の核小体内で、反応金粒子標識が三次元立体配列局在を示す明瞭な所見が得られた。同時に超薄凍結切片による免疫電顕金コロイド標識を施行して最終像の比較検討をすると、PEG法による像の優秀性が示された。 これらの本年度成果を基盤として、次年度は、(1)有意な免疫反応を示す7種の抗体を用いた免疫電顕解析をPEG法で強力に推進させて、各々の抗原の核内微細局在の三次元的解析に務める。(2)7種の抗体の抗原分子の遺伝子工学的同定を京大竹安教授と共同で遂行する。(3)所見を総合して欧文誌で発表する、を遂行する。
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