本研究では雄の生殖細胞だけでなく雌の生殖細胞にも精巣内で精子形成を起こす能力があるかを検討することを目的としている。18年度の研究では以下の研究を行った。 (1)in vivoの移植アッセイによる各発生段階の雌PGCの精子幹細胞活性の解析 本研究では精細管内移植により、分化過程の異なる段階で精細管への定着能がメスのPGCにもあるか否かを調べた。全身にLacZ遺伝子を発現するROSA26マウス、もしくはGFPを発現するGreenマウスを用いをドナーとし、胎生6日齢から生後の雌マウスから採取した生殖細胞を用いた。胎生6日目ではepiblast細胞、8日ではembryoの後半部分、10日では腸間膜、11日以降生後のステージでは生殖巣(卵巣)をトリプシン/DNAseによりバラバラの細胞として用いた。胎生12日目以前のステージではyolk sacよりDNAを抽出し、PCRにて雌雄を決定した。ホストマウスとしてはc-Kit遺伝子の欠損により先天的に精子形成の欠損したWマウスを用いた。移植後3-4ヶ月でホストの精巣を摘出し、LacZ染色もしくはUV照射下でGFPの発現を指標としてドナー細胞由来のコロニーの有無を調べたが、雄個体からの移植ではコロニー形成が認めれたが、雌個体からは認められなかった。 (2)in vitroの実験系による各発生段階の雌PGCの幹細胞活性の解析 本研究では胎児期および生後のメス生殖細胞PGCからin vivoでGS細胞を誘導できるかを検討した。GS細胞は新生児マウスの精巣から樹立することができるので、胎生後期(胎生16-19日齢)のPGCにはそれと同一の培養条件が適用できる可能性が高く、この条件下でどの日齢以降がGS細胞を樹立できるかを調べた。その結果、雌個体からは胎児期および生後にかけてGS細胞の樹立はできなかったが、雄個体からは胎生中期以降でGS細胞の樹立に成功した。
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