研究代表者らはこれまで精子幹細胞の機能解析を行ってきたが、2003年にマウスの精子幹細胞の長期培養系を独自に確立し、これをGermline Stem(GS)細胞と命名した。18年度の研究では胎児期および生後のメス生殖細胞PGCからin vitro でGS細胞を誘導できるかを検討したところ、メス個体からは胎児期および生後にかけてGS細胞の樹立はできなかったが、雄個体からは胎生中期以降でGS細胞の樹立に成功した。19年度の研究ではこの胎生期由来のGS細胞(fGS細胞)についてその発生ポテンシャルやインプリンティングなどの解析を行った。まずfGS細胞はGS細胞と同様に長期間に渡って安定に試験管内で増殖することが分かった。fGS細胞を精巣内に移植し、3ヶ月後にホストマウスの精巣を調べたところ、精子の形成が認めれた。精子には子孫作成能もあることが顕微授精により確かめられた。しかしその子供についてゲノムインプリンティングを調べたところ、一部の仔に異常が認められた。胎生期の生殖細胞ではゲノムインプリンティングの消去と性特異的刷り込みが起こり、これが生殖細胞の発生ポテンシャルと関わっている可能性が高いと考え、遺伝子の発現パターンをGS細胞とfGS細胞においてマイクロアレイ法にて比較検討し、差のある遺伝子群を見いだした。中にはDNAメチル化酵素などゲノムインプリンティングに関与が示唆される遺伝子も認められた。
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