研究概要 |
この研究の目的は、さまざまな細胞機能の制御に関わる局所H^+シグナルを検出し定量的に調節できるバイオツールとなりうる分子を探索し、その利用法を開発することである。私達は、膜電位依存性プロトンチャネル(H^+チャネル)をその鍵となる分子と位置づけ、H^+チャネルを高密度で発現しているマイクログリア(GMI-R1)とH^+チャネルを発現していない好塩基性白血病細胞(RBL-2H3)のサブトラクションRT-PCRを行い、GMI-R1で5倍以上発現の高いcDNAライブラリーを作成した。ホモロジー検索を行い、これまでに365種類の遺伝子を検出した。まだ解析途中であるが、catepsin, lysozymeなどマイクログリアの機能に密接に関連したもの他、機能未知の遺伝子を現在81個検出している。このデータベースの作成は続行中であるが、平行して機能未知の遺伝子の中から膜蛋白をコードすると推定されるものをCOS7,CHO、 GMI-R1など各種の細胞に一過性に発現させてnative H^+ channel活性のスクリーニング(第一段スクリーニング)に着手した。現在のところ、単独でH^+ channel活性に大きく影響を与える遺伝子は確認できていない。更に、研究期間中にH^+チャネルの分子実体として新たに報告された遺伝子(VSOP/Hv)を発現させた細胞で見られるH+電流の性質を検討した。native H^+ channelと大凡の電気生理学的性質が一致したが、活性化閾値が過分極側にシフトしていた。また空胞型proton pump電流記録方法をほぼ確立したので、今後H^+ pump活性も機能スクリーニングに加え、第一スクリーニングを終えた遺伝子とVSOP/Hvの共発現も検討する予定である。
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