研究概要 |
イノシトールリン脂質はホスファチジルイノシトールのイノシトール環3,4,5位水酸基の可逆的なリン酸化の結果生じる多様な派生体の総称であり、生体膜に存在する。中でも、ホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸(PI(3,5)P2)は、イノシトールリン脂質の中でも最も遅れて発見された分子種であり、未だその生理機能は明らかになっていない。本研究では、PI(3,5)P2により制御されることが期待されるRabGAP候補タンパク質に着目し、候補分子であるGRAMTBC1、GRAMTBC2、GRAMTBC3が実際にRabGAPとしての活性を持つか否かを明らかにすることにより、PI3,5)P2の生理機能の解明の端を開くことを目的とする。本年度は、多数存在するRabファミリー分子群の中から、その標的となるRab分子を効率的に同定する手法の開発を行った。Rabタンパク質および、RabGAPタンパク質は細胞内での半減期が長く、RNA干渉法の適用が困難なことが知られている。そこで、PI(3,5)P2の標的となり得るRabGAP候補タンパク質の機能を阻害する目的で、PI(3,5)P2産生酵素の遺伝子をジーンターゲティングにより欠損させることによりホモ遺伝子欠損胚性幹細胞を樹立し、本細胞株において、細胞内のPI(3,5)P2がほぼ完全に消失していることをHPLC分析により確認した。この細胞株を用いて、緑色蛍光タンパク質融合発現ベクターを利用して、Rabの細胞内局在の変化(Rabは活性化状態の変化に伴い、細胞内局在が変化することが知られている)について検討を行った。その結果、全60種類のRab分子のうち、4分子において顕著な局在の異常が見出された。これらの4種のRab分子はアミノ酸の相同性から1つのサブファミリーを形成していると考えられた。
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