生命の基本単位である細胞は、蛋白、脂質、糖質、核酸から構成されるが、中でも蛋白同士の相互作用は細胞の構造の大枠を決定する点で重要である。ほとんどの蛋白分子は、蛋白相互作用に関わるモジュールをもち、その組み合わせを利用して、多彩な蛋白相互作用を実現している。本研究では1)人為的な蛋白相互作用モジュールを組み合わせて、実際に自然界に存在するよりも、より強固な蛋白相互作用を実現できるかどうか、2)より強固な蛋白相互作用をもつ蛋白分子を、細胞レベルで淘汰選択することが可能かを、明らかにしようとしている。平成18年度には、蛋白相互作用を反映して分泌型ルシフェラーゼをレポーターとして発現すると同時に、分泌型アルカリホスファターゼを内在性のレファレンスとして発現する1体型のレポーターベクターを作成した。また、当初計画によるWWドメインを対象とする試験を行ったが、十分な相互作用を実現できなかった。そこで、平成19年度には対象を変更し、DNA活性化領域に融合した低分子量G蛋白RhoAと、DNA結合領域に融合したRhoA標的蛋白Rhothekinを同時発現する1体型ベクターを作成した。このRhoA/Rhotekinベクターとレポーターベクターを共発現し、RhoAをリポ多糖によって細胞外から活性化させて、RhoA-Rhotekinの相互作用が成立する条件をつくりだし、実際にレポーターのシグナルが増強されるかの検討に着手した。ところがこれまで期待するような十分な応答が得られていない。平成20年度は最終年度にあたるので、細胞系や刺激方法を変えて試行を継続する。
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