研究課題
RECKは、種々の癌化シグナルの転写ターゲットであり、その発現は、様々な難治性の予後・転移性と密接に相関する。従来、RECKは、MMP9、MMP2,MT1-MMPの膜型インヒビターであると考えられてきたが、RECKノックアウトマウスの表現型には、これらの既知の機能だけでは説明できないものが顕れる。それは、血管形成の異常と、大脳皮質形成神経細胞のprecocious differentiationである。我々は、このうち、中枢神経系の表現型が、Notchシグナルに依存して発現することをつきとめた。このメカニズムにより、RECK欠損神経前駆細胞は、自己複製(neurosphere形成)能を著しく喪失することも判った。次に、我々は、ADAM10活性あるいは発現の抑制により、この表現型を有意にレスキューすることが出来ることをつきとめた。RNA干渉法によりRECK発現を抑制した神経前駆細胞では、Notchの主要なリガンドである、DeltaとJaggedのsheddingの異常な亢進が認められた。この現象は、ADAM10の抑制により、特異的に正常化した。免疫沈降法により、RECKとADAM10は細胞膜上で結合することが示唆された。また、分泌型のRECK組換体蛋白質は、分泌型ADAM10組換体蛋白質によるDelta組換体蛋白質の分解を有意に阻害した。免疫組織学的解析から、RECK発現は、神経前駆細胞のマーカーであるNestinの発現と密接に共局在することも判明した。これらの知見から、RECKはADAM10の生理的なインヒビターであること、そして、生体においては、ADAM10の活性を局所的に制御することにより、Notchシグナルをその最上流から制御しているとの結論に達した。同時に、RECKは、中枢神経系の正常な発達において、必須な分子であることも認識された(以上投稿中)。我々は、さらに、RECK欠損に伴う血管形成の異常もNotchシグナルに依存する、という仮説をたて、研究を進めている。
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