I型アレルギーはアレルゲンがマスト細胞上に発現する高親和性受容体に結合した特異的IgE抗体と結合し、これを引き金にして放出される各種メディエーターにより惹起される急性反応でり、その根本的原因となるIgE抗体は、抗原への特異性を保ちつつ定常部の遺伝子を組換える、クラススイッチ組換えによってはじめて産生される。クラススイッチの遺伝子組換には、特異的な組換え因子であるAIDが必須であるが、この発現によって全ての組換え標的が等しく組換えを起こすわけではなく、抗原の種類や侵入経路に応じて産生されるリンホカインなどによる調節を受け、最もふさわしいクラス・アイソタイプのH鎖定常部遺伝子が標的となって組換えが進行する。この標的遺伝子の特異性は組換えに先だって起こる転写(germline転写、以下GT)によって調節されている。IgEへのクラススイッチ組換えは極めて緻密に制御されており、正常な個体におけるその濃度はIgGに比べ10万分の1以下に抑えられているが、アレルギーの根本治療としてIgEへのクラススイッチ組換えを特異的かつ効果的に抑制できるものは未だ開発されていない。 本研究では、本研究代表者らのこれまでの成果から巧妙に制御されていることが明らかにされた、クラススイッチ組換えの標的遺伝子特異性をつかさどる因子や組換えの場に介入することがアレルギー制御の根本的標的になり得るかを検討し、その可能性を追究する糸口を切り開くことを目指した。その結果、このGTと組換えの場を制御する因子としてNF_KB、IRF4が同定され、これらがTGFβ1シグナルの下流で作用するId2とともに、創薬標的となりうること、ならびに2次リンパ組織のダイナミックな構築変化と3次リンパ組織の形成による微小環境(場の制御)がTh2ドミナンスの解除によるアレルギー抑制の重要な要素となりうることを明らかにした。
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