近年のゲノムサイエンスの目覚ましい発展に伴い、染色体上に存在するマイクロサテライトやSNPなどの遺伝子多型をマーカーとして容易に利用することが可能になり、それらを用いた連鎖解析や、それに続く関連解析といった遺伝統計学的アプローチを通じて、様々な疾患、特に単一遺伝性疾患に関与する原因遺伝子の同定が急速に進みつつある。 しかしながら一方で、昨今患者数の増大が強く懸念されている、糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病や、アレルギーなどの自己免疫疾患は、単一因子のみによって支配されるものではなく、体質といわれる遺伝的要因の他、生活習慣や環境的要素が、相互かつ複雑に絡み合いながら、その易罹患性(かかりやすさ)を決定している。現在、比較的大きな影響力を有する一部の要因が特定されつつあるものの、多くの解決すべき問題は依然として残されたままである。 近年新たに提唱され、脚光を浴びつつあるMultifactor Dimensionality Reduction(MDR)アルゴリズムは、多因子疾患の易罹患度に対して、複数の遺伝子多型がもたらす複雑な高次元相互作用を二元化し検出するという画期的な手法である。本研究では、この手法をベースとして、多因子疾患に関する新たな診断および予測システムを確立した。これにより、遺伝子多型に関する情報に加え、生活習慣や臨床検査データなど様々なタイプのデータを幅広く考慮かつ活用することで、より信頼度の高い結果が期待できる。また、遺伝的アルゴリズム(GA)などの最適化法を組み合わせることで、全体的な計算の効率化を図り、高次元相互作用をもたらす因子の組み合わせを迅速かつ的確に検出することが可能となった(712文字)。
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