東南アジアを中心として、熱帯地域に流行している三日熱マラリア原虫は、培養系が確立されておらず、研究が著しく遅れている。その理由は、三日熱マラリア原虫がヒト幼若赤血球にのみ感染し、培養のための十分な幼若赤血球の入手が困難であるためである。そこで、本研究は、全てのステージのヒト赤血球に感染し、培養系が確立している熱帯熱マラリア原虫の赤血球侵入リガンドを三日熱マラリア原虫に遺伝子導入することで、全てのステージの赤血球に侵入ができる三日熱マラリア原虫を作成し、未確立の三日熱マラリア原虫の培養系の確立をめざして実施している。本年度も、昨年度に引き続いて、熱帯熱マラリア原虫のリガンドを発現する三日熱マラリア原虫用コンストラクトの改良を行った。作成したコンストラクトを培養が確立している熱帯熱マラリアの系を用いた予備実験で、熱帯熱マラリア原虫に遺伝子導入できることを確認した。このプラスミドをタイ国の流行地に持参し、患者血液から分離した三日熱マラリア原虫を材料として形質転換を試みたが、プラスミドが取り込まれ時間経過と共に増殖効率が高くなるような、予測された三日熱マラリア原虫の作成には至らなかった。
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