1.培養スポロゾイトの肝細胞内での発育能の検討 培養スポロゾイトが、感染蚊の唾液腺スポロゾイトと同様に、宿主肝細胞に対して感染性を有することを確認するための実験を行なった。ネズミマラリア原虫感染マウスより採取した血液を出発材料としてオオキネート培養を行い、次いで培地をオオシスト培養用培地に置換してオオシストへと分化させた。その後スポロゾイト出芽期の細胞を培養肝細胞(HepG2細胞およびマウス初代培養肝細胞)と共培養した結果、培養肝細胞への侵入、細胞内核分裂、肝細胞型原虫の破裂によるメロゾイト様細胞の放出を確認することができた。 2.オオキネートの運動性に関与する遺伝子の同定 ネズミマラリア原虫において生殖体形成への関与が推測されるグアニル酸シクラーゼβ遺伝子を破壊した原虫(GCβ-KO原虫)を作成して表現型解析を行ったところ、予想と反して正常レベルの生殖体形成が認められた。ところがGCβ-KO原虫感染マウスをハマダラカに吸血させると、中腸でのオオシスト形成が100%抑制された。中腸における原虫の動態を詳細に解析した結果、GCβ-KO原虫はオオキネート形成能を保持するものの、その運動性が失われており、中腸細胞を通過できないことがわかった。一方GCβ-KO原虫についてスポロゾイト培養を試みたところ、オオシストへの発育がみられ、さらに運動性を有するスポロゾイトが観察された。これらのことから、(1)GCβはオオキネートの運動機能に関与しており、この遺伝子機能が欠損することでオオキネートは運動性を失って媒介蚊の中腸を通過できなくなること、(2)GCβ-KOオオキネートは、運動性を失ってはいてもオオシストさらにはスポロゾイトへの分化能を保持していること、(3)培養スポロゾイトが運動性を示したことから、GCβ遺伝子が関与しているのはオオキネート期の運動性に限定されることが明らかとなった。
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