昨年度、本課題においてマウスPGRP-Sの組換え体作製ならびにサルモネラ感染細胞におけるPGRPの発現を検討したことに引き続き、平成19年度はPGRP-Sの自然免疫における役割について検討した。 まず、マウスPGRP-S組換え体の抗菌活性について検討した。その結果、マウスPGRP-Sもヒトの相同分子であるPGLYRP-1と同様、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌に対し抗菌作用を示した。また、ヒトのものとは異なりリステリアに対しても強い抗菌活性を示した。 次に、PGRP-Sが免疫担当細胞のサイトカイン産生にどのような影響があるか、培養細胞を用いて解析したところマウスマクロファージ由来細胞株であるRAW264.7では細菌感染によらずに炎症性サイトカインであるTNF-αの発現を誘導するのに対し、樹状細胞由来細胞株であるDC2.4に作用させてもTNF-αの産生を誘導せず、対照的にIL-6の産生を強く誘導した。どちらの細胞株でもIL-10ならびにIL-12の産生は誘導しなかった。 さらに、in vivoにおけるPGRP-Sの役割を明らかにするためPGRP-Sをマウスに前投与したマウスを用いて感染実験を行った結果、前投与群では対照群と比べ臓器内の菌数が有意に低下したことからPGRP-Sが感染免疫において何らかの役割を果たすことが示唆された。 以上より、PGRP-Sはマクロファージや樹状細胞に対し炎症性のサイトカイン産生を誘導し細菌の感染を抑える一方で炎症を増強する可能性が示唆される。
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