グラム陰性細菌の蛋白分泌システムとしてはこれまで1型から5型までが報告されているが、我々はOuter membrane vesicle(OMV)を6型分泌装置として位置づけ、細菌蛋白の宿主標的細胞へのデリバリーシステムとしての機能について研究を行っている。一方、我々は、腸管出血性大腸菌O157:H7の病原性発現に関する研究を展開してきているが、その中でClpXPが本菌の腸管付着に関連するIII型蛋白分泌システムの発現調節に関わることを見出した。本研究は、O157:H7の毒素がOMVによって細胞外へ分泌される可能性を検討し、OMVを利用したO1570MVコンポーネントワクチンの構築を目的として行われる。今年度は以下の事柄を明らかにした。 1.すでに我々が構築した大腸菌O157:H7Sakai株由来のClpXP欠損株CS5297について、OMVの合成量の検討を行った。OMVを含むfractionを超遠心により濃縮し、Superose 12^<TM>columnを用いて精製した。OMV fractionを透過型電子顕微鏡(JEOL JEM2000EX)下で観察した結果、ClpXP変異によりOMV産生が著しく増加することが明らかとなった。 2.大腸菌O157:H7の毒素Stx1/2の特異抗体を用いて、Western blottingを行い、両毒素の分泌量を検討した結果、それらの分泌量はClpXP欠損によって、顕著に増加することが明らかとなった。 3.精製したOMV fractionにはStx1/2が含まれることを明かにした。この結果は両毒素がOMVによって宿主細胞へ輸送されることを示唆しており、本研究をさらに推進する意義が高いと考えられる。
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