今回の研究により、オートファジーと自然免疫誘導能の関係について検討した。オートファジーのプロセスに重要なレギュレーターであるAtg5-Atg12複合物もウイルスに対する免疫反応に有用な役割を果たしていることが判明してきた。 オートファジーでの重要な蛋白であるAtg5をノックアウトさせたマウス胎仔線維芽細胞(MEF)に大量の、vesicular stomatitis virus(VSV)を感染させたが、感染させた細胞の中ではウイルスが増殖されなかった。それは主にウイルス由来二本鎖RNAウイルスがAtg5がノックアウトされたMEF細胞の中でインターフェロンの過剰産生されウイルスの増殖が抑えられたためである。また、この現象は、Atg7ノックアウトされたMEF細胞でも認められた。従って、今回の研究により、オートファジーが起こることにより、ウイルスが細胞内で増殖しやすくなっていることを示している。 一方、Ate5又はAtg12遺伝子をMEF細胞に導入させ、これらの蛋白を細胞内に過剰発現させると、Atg5-Atg12複合体形成が活発となり結果として、バクテリアを殺す過程におけるその重要な役割に対して、オートファジー装置の部分は、抗ウイルス自然免疫すなわちI型インターフェロン産生を抑制し、それにより宿主細胞におけるウイルス複製に寄与することが判明した。更に我々が、分子間相互作用を詳細に検討した結果、Atg5-Atg12複合体形成は、レチノイン誘導遺伝子I(RIG-1)のCARD部位、及びインターフェロン-βプロモーター活性化因子(IPS-1)とが結合し、結果として、I型インターフェロンの産生が抑制されていることが判明した。 今後、この一見感染防御と相反すると思われる現象が、生体内でどのように働いているかを更に詳細に検討していく。
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