平成18年度はスクレイピー感染マウスの脳サンプルを用いてDifferential Display法による網羅的遺伝子解析をおこなった。本研究では以前に調製した、感染後各日数(15、30、60、90日)を経過させた、マウスの大脳から抽出した遺伝子サンプルを用いた。前処理として、DNase処理とRNase処理をおこなった。その後、TaKaRa Differential Display Kitを用い、ランダムプライマーによる網羅的な遺伝子増幅を行ない、RI標識(^<32>P)とX線フィルムにより電気泳動バンドを可視化した。 その結果、感染後90日の遺伝子サンプルからは約600のバンドで差異が見られた。これらのバンドを切り出し、再びPCRにより増幅した後、各バンドの塩基配列をシークエンスにより決定した。本年度ではこれらのうち、268バンドでの遺伝子、すなわち413遺伝子の塩基配列が判明した。PubMedによりこれらの塩基配列を検索した結果、約84%はマウス由来のゲノム断片やヒトゲノム断片といった本研究とは無関係と考えられる塩基配列であった。残りの塩基配列のうち、1配列はウイルス由来の塩基配列、8配列はバクテリア由来の塩基配列、51配列は既知の遺伝子とは相同性の低い塩基配列、3配列は全く相同性のない配列であった。これらの塩基配列とプリオン病との関連性については現在検討中である。今後は残りの塩基配列解析に加え、感染後90日以外のサンプルの網羅的遺伝子解析を順次おこなう予定である。
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