平成19年度は昨年度に引き続いて、感染後90日のスクレイピー感染マウスの脳サンプルを用い、Differential Display法によりえられた約600のバンドでの各バンドの塩基配列をシークエンスにより決定した。本年度ではこれらのうち、138バンドでの遺伝子、すなわち238遺伝子の塩基配列が判明した。PubMedによりこれらの塩基配列を検索した結果、約78%はマウス由来のゲノム断片やヒトゲノム断片といった本研究とは無関係と考えられる塩基配列であった。残りの塩基配列のうち、1配列はウイルス由来の塩基配列、21配列はバクテリア由来の塩基配列、17配列は既知の遺伝子とは相同性の低い塩基配列、14配列は全く相同性のない配列であった。これらの塩基配列とプリオン病との関連性については現在検討中である。現在は残りの塩基配列解析に加え、感染性90日以外のサンプルの網羅的遺伝子解析を順次おこなっている。 また本年度は以前に調製した、感染後各日数(15、30、60、90日)を経過させた、マウスの大脳の固定組織をもちい、透過電顕用試料を作製した。通常の透過電顕観察をおこなったところ、感染後90日のサンプルにおいて、約40nmの粒子状の構造を観察できた。既知の研究報告から、この構造がプリオン病に関わるウイルス体であると推測できた。今後はさらなる観察を行なうとともに、これらの遺伝子を標識するための電顕in situ hybridization法の確立を行なっていく予定である。
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