平成20年度は昨年度に引き続いて、感染後90日のスクレイピー感染マウスの脳サンプルを用い、Differential Display法によりえられた約119のバンドでの各バンドの塩基配列をシークエンスにより決定した。PubMedによりこれらの塩基配列を検索した結果、約89配列はマウス由来のゲノム断片やヒトゲノム断片といった本研究とは無関係と考えられる塩基配列であった。残りの塩基配列のうち18配列はバクテリア由来の塩基配列、12配列は既知の遺伝子とは相同性の低い塩基配列であった。これらの塩基配列とプリオン病との関連性については現在検討中である。また本年度はこれまで解析されてきた配列に対して、コドンバイアス解析をおこなった。その結果、マウスのみならず、ウイルスやウイロイドなどにもコドンバイアスが存在し、またいずれのコドンバイアスにも類似しない未知配列も存在した。コドンバイアスの解析によるプリオン病候補遺伝子の解析は有用であると考えられ、今後も引き続き解析していく予定である。 また本年度は以前に調製した、感染させたマウスの大脳の固定組織をもちい、電顕in situ hybridization法の確立を試みた。感染後90日のサンプルにおいて、とくに発現上昇の見られた塩基配列に対してcRNAプローブを作製した。このプローブを用いin situ hybridization法による組織内分布を観察したが、明瞭な陽性反応は観察できなかった。今後は他の塩基配列による観察をおこなうとともに、他の日数による観察もおこなっていく予定である。
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