研究概要 |
今年度は、平成18年度に作成された、本邦初(Pubmed.医中誌検索【2007.3.11現在】)のKey Feature理論に基づいた臨床判断能力テストを実施した。テストの構成は、以下の通り2部構成とした。 1)第1部:臨床判断を問う症例問題[内訳:1-1.重症で緊急性のある疾患15題+1-2.軽症で緊急性のない疾患15題] 2)第2部:知識を問う多肢選択型問題[2.上記の疾患に関連した知識を問う問題90題] リクルートの結果、平成18年度ポリクリを終えた6年生33名と平成19年度ポリクリに臨む新5年生44名が集まった。試験は平成19年4月6日、全員に実施された。これら2学年の試験成績を算出し、その平均点の差をt検定により比較検討した。また診療判断能力において、差の大きさをCohen's dによるEffect Sizeに換算し、1-1,1-2のいずれが大きな向上の度合いを見たか考察した。その結果、知識も臨床判断能力のいずれの平均点が有意に向上した(p<0.00,p<0.00)。またEffect Sizeを検討した結果、1-1は0.666、1-2は0.957であり、つまり重症ではない・緊急性のない疾患に関する臨床判断能力の向上の方が大きいことを示した。これにより臨床判断能力が現在のポリクリ教育体制を通じてどの程度向上するか知見が得られた。これは日本においてほとんどデータが無かったため貴重である。 今後は、どういった教育環境がこの臨床判断能力の向上に寄与したのか、総合診療部実習における医療面接実習に関する自己評価アンケートで得られた結果との関連性と合わせて研究中である。またこの臨床判断能力の向上の度合いは、外来教育体制の改善により、さらに向上するものなのかを探索していく計画である。
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