位相差トラッキング法(PE法)は、Bモードエコーに加えドップラー法を併用し局所で運動する一点の速度変化より数学的に運動距離を計測する方法で、数μmm単位のごく微小な動きを捉えることができる。この方法を利用して微小な局所部位の厚みの変化を測定できるため、同部位にかかる圧力を同時に測定することにより同部位の硬化度測定が可能となる。今回PE法を用いて膠原病における皮膚病変の硬化度の測定に応用することを検討した。 ・皮膚病変測定部位に対する加振装置の設計、作成 測定部位の皮膚に対して一定の圧力を加えることのできる加振装置を設計、作成した。この装置は皮膚との接触する部位に一定のプログラムされた周波数、振幅の振動を与え、その波形をモニターできることが確認された。 ・皮膚病変局所部位における加振後の壁厚変化の検出 上記□で作成した加振装置による圧力の変動に伴う皮膚壁厚の変化が検出しうるか正常人で検討した。皮膚乳頭層より表面に存在する表皮部分をSubepidermal low echogenic band(SLBE)により判別し、この部位の弾性エコーパターンを観察した。加振条件を変化させ検討した結果、正常人における弾性パターンと得られる計算上の弾性値は、周波数1Hz、0.5秒の矩形派を用いた加振により再現性をもって一定のパターンが得られた。 ・市場人における皮膚弾性パターンの測定 26歳から44歳までの正常人男性5人、また26歳から34歳までの正常人女性3人の前腕屈側ほぼ中央の皮膚を上記加振装置により振動させ、同部位の弾性エコーパターンを計測したところ計算上のパスカル値として平均104kPa、SDは10kPaとなり比較的均一な硬さの分布を示した。 ・強皮症患者における皮膚弾性パターン 浮腫期の強皮症患者1名および硬化の進行した強皮症患者2名の皮膚病変を上記方法にて観察した。結果として弾性エコーパターンは浮腫期の場合、弾性はやわらかい病変として正常人よりさらに均一な病変として計測され、硬化病変として確立した皮膚病変においては固い病変として正常人より不均一な弾性エコーパターンを示した。今後、検討患者数を増やし、さらにスキンスコアとの関連など統計学的解析を検討中である。
|