目的:癌や感染症の早期診断のために、超微量(fmole:千兆分の1モル)の病原体や癌の抗原を網羅的に計量するための高密度IgG抗体チップを作製する。IgG抗体の重鎖のC末端部に5個のシステイン繰り返し配列を導入したIgG(cys-IgG)を高発現する遺伝子改変マウスの作出を行い、マウスを抗原で感作して得られた抗原特異的なcys-IgGをダイアモンド様表面加工(DLC)した基板上のマレイミド基に共有結合させ、抗体の立体構造と配向性を保った高密度抗体チップの作製を目指す。 実験:システインタグ付きIgG(cysIgG)発現ベクターの開発(中村・古元):マウスIgGγ1鎖の全長cDNAの3'端に5個のシステイン配列を繋ぎ、ウサギβグロビン第2イントロンの3'端と繋いでプラスミドpKBPAのEcoRIとXhoI切断サイトに挿入する。WAP promoter tansgene(2.6kb)カセットをT-Easy Vectorにクローン化して、NotIで消化した後、ウサギβグロビン第2イントロン・マウスIgGγ1・5個のシステイン配列を組み込んだIgGγ1の5'端のNotI切断サイトに挿入してトランスジェニックコンストラクトの作成を試みたが昨日せず、新たにTargeting Vectorの作成を試みた。NCBIデータベースから検索したRIKENマウスのIgG重鎖cDNA、Clone:A530093J23のcdsのストップコドンの直前に5つのシステイン繰り返し配列をコードするtgctgctgctgctgcを挿入し、Cte-loxp neoR cassetを用いてBamH1で切り出しhomologous recombinationによる発現ベクターを作出してFVB/N受精卵への注入を試みている。 マウスHSP70特異IgGの精製(中村・大学院生):肝細胞癌に高発現するHSP70の蛋白精製標品を1mg/mLの濃度にFreund Adjuvant・リン酸緩衝液で調製し、10μLずつ3箇所腹腔内に注射して、2週間後に同様に10μL注射して、4週間後に30μLを同様に注射してのち2週間後に脾臓と全血を採取し、精製して得られたIgG画分を試料とした。これをマレイミド基或いはサクシニイミド基を導入したチップ基板に固定化を試み、固定化条件の検討を行った。対照としてGFP蛋白を用いてチップ基盤への固定化条件を決定した。
|