研究概要 |
ディーゼル排出微粒子(DEP)はきわめて小さく、容易に呼吸器系を介して生体内に侵入してアレルギー等を誘発する。アレルギー発症のひとつとして、生体内タンパク質との共有結合が考えられる。我々はDEP成分である1,2-ナフトキノン(1,2-NQ)のような親電子性物質が、ヒトと似た性質を示すモルモット気管リングを収縮し、その原因が気管内タンパク質のシステイン残基を介した共有結合によることを明らかにした。さらに、予備的検討から、DEP中には1,2-NQ以外にグルタチオンのようなチオール基化合物と容易に反応する成分がかなり含まれていることを見出した。そこで本研究では、DEP中から親電子性物質を選択的に釣り上げる新規な方法を開発し、DEP中親電子性物質の同定を試みた。 DEPは、国立環境研究所の高野裕久健康系領域長より提供していただいた。DEPに対してその50-100倍量のヘキサンに懸濁し、超音波処理により抽出した。抽出後、ガラスフィルター等を用いて濾過し、得られたヘキサン層を脂肪族炭化水素類画分とした。一方、抽出したDEPをさらにヘキサンと同量のジクロロメタンで抽出を行い、再度の超音波処理により得られたジクロロメタン層を多環芳香族炭化水素類画分とした。得られた、それぞれをエバポレーターで蒸発乾固し、一定量のDMSOに溶かし、生理的pH条件下において、Activated-thiol sepharoseゲル一定時間反応させた。その後、当該ゲルに共有結合した親電子性物質に複数の種類のプロテアーゼを反応させて、未知の親電子性物質のシステインあるいはシステニルグリシン結合体の遊離について検討した。現在のところ、効率良く当該ゲルから遊離する化学物質を同定するまでには至っておらず、今回用いた以外のプロテアーゼの使用・至適pHや反応時間等についても今後検討を加える予定である。
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