研究概要 |
化学物質取り扱い職域において、同じ量の曝露をうけても感受性が高く中毒を発症しやすい作業者のスクリーニングは、適正配置を行うための重要な課題である。本研究では、トリクロロエチレン(TCE)使用職場で数百人にひとりが発症する重症型皮膚肝疾患の感受性に関連のある、N-アセチル転移酵素2(NAT2)によるTCE代謝物量(S-1,2-ジクロロビニル-N-アセチルシステイン(DVAC))を遺伝子改変動物及び患者・作業者で測定し、倫理面で実施へのハードルが高い遺伝子解析を実施することなく、高感受性者を曝露開始後早期に予測するモデルの確立をめざす。平成18年度においては、米国NIHより供与されたCYP2E1ノックアウトマウスおよび野生型マウスを繁殖させ、雄マウスを10週齢まで飼育後3群にわけ、0,1000,2000ppmのTCEに1日8時間、連日7日間曝露した。24時間尿を採取するとともに8日目に解剖し、血液生化学検査、肝、腎、生殖器重量の測定、定法に従った病理標本の作製を行った。結果については現在解析中である。ガスクロマトグラフ質量分析計を用いたDVACの定量には誘導体化が不可欠であるが、トリクロロ酢酸、トリクロロエタノールとともに、メタノール硫酸法(グルクロン酸抱合体も酸加水分解されトリクロロエタノールとして測定)にて誘導体化する方法を検討した。トリクロロ酢酸、トリクロロエタノールは曝露作業者の代謝物量を定量する感度が得られたが、DVACについては検出限界以下であり、現在検討を続けている。
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