研究課題/領域番号 |
18659172
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
大石 浩隆 佐賀大学, 有明海総合研究プロジェクト, 准教授 (10244021)
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研究分担者 |
中島 幹夫 佐賀大学, 医学部, 教授 (80159061)
小林 元太 佐賀大学, 有明海総合研究プロジェクト, 准教授 (40291512)
東端 晃 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究本部・宇宙環境利用科学研究系, 助手 (30360720)
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キーワード | 地球環境 / 人工衛星 / リモートセンシング / 感染症 |
研究概要 |
本研究は、魚介類摂食に起因する致死的感染症原因菌ビブリオ・バルニフィカスの有明海での増殖傾向に関連する海域環境の変化について、衛星リモートセンシングデータを用いて把握し患者発生予防に繋げる事が目的である。この背景には、これまでの我々の調査から有明海において菌が高率に検出され、その為に有明海を囲む北部九州四県において多くの発症例がある事と、菌の増殖が海域環境、特に海水温と海水塩分濃度に影響され(至適環境;温度17℃以上、塩分濃度15〜25‰程度)、そのモニタリングの為の直接的海水採取には膨大な労力等が必要であり、海域データが毎日入手可能な衛星データを使用したいという事があった。衛星データは米国航空宇宙局保有の地球観測衛星TerraとAquaに搭載しているMODIS(MODerate resolution Imaging Spectroradiometer)を用いた。必要パラメータは海水温と塩分濃度だが、塩分濃度測定技術は未だ開発されておらず、利用可能なデータとして海水温とクロロフィル(植物プランクトン濃度。動物プランクトンや魚介類に本菌は付着しているが、その餌になるもの)濃度を選択した。まず有明海の複数:点の実測値と、同位置のMODISデータとの相関を調査した。その結果、海水温は高い相関(R^2=0.925)があったが、クロロフィルには認められなかった(R^2=0,01)。そこで塩分濃度に影響を与える河川からの真水(雨)の流入を間接的に把握できる濁度についてMODISデータを利用した。実測値の濁度と塩分濃度間には相関が見られ(R^2=0.506〜0.882)、濁度のMODISデータと実測値間にもR^2=0.783(衛星の角度補正後)と相関が認められた。これを基に塩分濃度が衛星データより推測可能となった。またMODISデータ推測塩分濃度と実測値間では、差分の標準偏差が0.19〜0.23という誤差であった。以上より菌増殖に関連する海域環境変化が衛星データよりモニタリング可能となり、増殖傾向を示す環壌が整ったと判断される場合には警報を発令するという利用や、本技術は世界中同一の条件で監視可能な為、全世界的な利用も考えられた。
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