腫瘍細胞を取り込ませた樹状細胞のMHC class II分子上に提示される抗原性ペプチドのスクリーニングとして、マウス肝癌細胞(MIH-2)と骨髄由来樹状細胞の融合細胞をPEG処理により作製し、抗I-Ak抗体のaffinity columnを用いてMHC class II/antigenic peptide複合体を分離した。酸処理によりペプチドを遊離させ、LC/MSを用いて解析を行った。コントロールとしてMIH-2細胞を取り込ませていないPEG処理樹状細胞を用意し、上記と同様の手法でMHC class II/antigenic peptide複合体を分離、酸処理によりペプチドを遊離させた。MHC class II分子に結合しうる13アミノ酸前後の領域のペプチドプロフィールを検索した。両者のペプチドプロフィールを比較すると、MIH-2細胞を取り込ませた樹状細胞のMHC class II分子上にのみ見られるペプチドピークが複数存在した。そのうちのひとつのピークのタンデム解析を行うと、EMTKというオリゴペプチドが同定され、データベースから由来蛋白を検索すると、肝癌細胞に発現するチトクロームP450-2j6の284から287アミノ酸から由来したものと判断された。この構造のN末端側にはI-Ak結合モチーフ構造が見られることから、この領域が抗原エピトープであると考えられる。EMTKとI-Ak結合モチーフ領域を含む13アミノ酸よりなるペプチドを合成し、C3H/HeNマウスにペプチドワクチンとして投与した。すると、ペプチド免疫マウスの脾細胞は高いインターフェロン-ガンマ産生を示し、本抗原がMIH-2肝癌細胞の腫瘍抗原となっていることが示唆された。コントロールのOvaalbuminペプチドにはこの作用はなかった。
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