研究概要 |
中皮腫発生予防のためのペプチドワクチンを関発するために、C3H/HeNマウス由来肝癌細胞MIH-2を用いた前実験を行い、LC/MS/MSを用いた解析により候補抗原ペプチドとしてcytochrome P450(CYP)2J、 isoform、 Nucleolin、 tRNA-ribosyltransferaseの3種類の抗原がpick upされ、最終的にCYP2Jを抗原ペプチドに選定した。CYP2jの276-290アミノ酸よりなるペプチドをアジュバントとともにマウスに投与すると、マウス脾細胞は高いインターフェロン-ガンマの産生を示し、in vitro再刺激によりさらにインターフェロンーガンマの産生増強を認めることから、T細胞に抗原特異的反応性を付与するペプチドワクチンとして機能すること示された。しかし、ペプチド投与回数が6回を超えると脾細胞のインターフェロンーガンマの産生は著しく低下することが問題となった。この抑制の成立したマウスの脾細胞にはCD4+Foxp3+制御性T細胞とCD11b+Gr1+の未熟骨髄細胞の有意な増加が認められ、この2種類の細胞の誘導・活性化が抑制機構誘導に深く関与することが示された。また、IL-10,TGF-βなどの免疫抑制性サイトカインの関与は少なく、抑制性細胞のエフェクター細胞への直接的な接触が重要であると考えられた。悪性腫瘍発生の抑制を目的としたペプチドワクチンには至適投与量、回数が存在し、その決定が効果的なワクチンの活用に重要であることが判明した。
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